2010年11月12日金曜日

中国人民元切り上げは抑制的かつ漸進的に=中国政府研究所室長が明言―アジア開銀研シンポジウム

Record China 1112()1737分配信

20101112日、アジア開発銀行研究所(河合正弘所長)は「国際通貨システムにおける日本と中国の役割」をテーマとしたシンポジウムを開催した。
冒頭、河合所長は「1970年代、80年代の日本の為替政策からの教訓」として、「急激な経済成長国は通貨切り上げとインフレのトレードオフ(両立できない経済関係)に直面する。通貨の割安状況を創出しないようにすべきだが、急激な通貨切り上げも避けるべきだ。また過度の金融緩和はバブルを招いてしまう」と指摘、通貨調整を産業構造改革の促進策として活用すべきだと提唱した。
注目されている中国の為替政策について、中国・国家発展改革委員会対外経済研究所の張建平・国際経済協力室長は「中国の収支不均衡は為替レートが主因ではなく、米国の低い貯蓄率や欧州の大幅な財政赤字によるもの。(人民元は)スケープゴートにされている」と強調、人民元の切り上げ幅は抑制的かつ漸進的なものになるとの見通しを明らかにした。さらに米国の過度の金融緩和により投資資金が中国など新興国に流れ込み、インフレや資産バブルを招来するとの懸念を表明、「日本のバブルの教訓を踏まえ『失われた10年』につながらないよう慎重に政策を運営している」と説明した。
また、中国社会科学院世界経済政治研究所の余永定教授は「米国の赤字は収入以上の資金を借り入れているためで、節約に努めるべきだ。米国の債務も過小評価されている」とした上で、「人民元の切り上げは中国経済にとって功罪両方あり、徐々におこなう必要がある」との考えを示した。さらに「ドルは2002年~2007年に41%下がっている上に、米国債も下落した」とし、今後も続くドル安、債券安により、中国、日本、他のアジア諸国の順に大きな被害を受けると警告した。
このほか、山下英次・大阪市立大学教授は、現行の国際通貨変動相場制度について「世界的な通貨危機・金融危機が頻発している背景に現行の不安定な変動相場制がある」と疑問を提示。固定相場制時代を具体的に検証した上で、将来、円や人民元などアジア主要通貨がバスケット方式(複数の通貨の加重平均)で参加する地域統一通貨「アジアEMS(経済金融連合) 」を実現することが望ましいと提案した。

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